新前橋驛
碑の背景
コメント
1886年11月、前橋市の開業医の長男として生まれた朔太郎は1913年に雑誌「朱欒」に詩を発表し、詩人として出発した。 新前橋駅前にある碑に書かれている「新前橋駅」は1925年に発行された 純情小曲集 に掲載された一編である。 
新前橋駅は1921年7月1日に上越南線が渋川まで開業した時に、両毛線の分岐駅として開設された。 「新前橋駅」の1行目に 野にあたらしき停車場は建てられたり とあるが、駅の開業が1921年、純情小曲集の発行が1925年であることから、開駅直後の様子が歌われている。

写  真
基本情報


所 在 地 : 前橋市古市町
MapCode : 20 756 062*18
建 立 日 : 1987年11月
建 立 者 : 前橋ライオンズクラブ
種   別  : 文学碑
撮 影 日 : 2013年12月25日

碑  文         新前橋驛          朔太郎
     野にあたらしき停車場は建てられたり
     便所の扉風にふかれ
     ペンキの匂い草いきれの中に強しや。
     烈烈たる日かな
     われこの停車場に来りて口の渇きにたへず
     いづこに氷を喰まむとして賣る店を見ず
     ばうばうたる麥の遠きに連なりながれたり。
     いかなればわれの望めるものはあらざるか
     憂愁の暦は酢え
     心はげしき苦痛にたへずして旅に出でんとす。
     ああこの古びたる鞄をさげてよろめけども
     われは瘠犬のごとくして憫れむ人もあらじや。
     いま日は構外の野景に高く
     農夫らの鋤に蒲公英の莖は刈られ倒されたり。
     われひとり寂しき歩廊(ほうむ)の上に立てば
     ああはるかなる所よりして
     かの海のごろく轟ろき 感情の軋りつつ來るを知れり。

 戻る

inserted by FC2 system